それと言うのもメルカリで注文されてしまったのだ。ネンドソーの各作品はメルカリに出品しているのだが、思えばかの2メートルティラノサウルスも、メルカリの他作品のコメント欄で依頼されたものであった。当の2メートルティラノサウルスは依頼主様に無事引き渡し済みなのだが、せっかくの労作なので「受注請負」の作例としてメルカリに写真を公開している。そして今度はそのページのコメント欄から、美少女フィギュアの発注を受けてしまった、というわけである。依頼を断る、などという選択肢はなかった。筆者のような誰にも知られず誰にも評価されず誰にも求められていない素人粘土製作者にとって、名指しでの製作発注は大変にありがたい承認欲求を満たす機会であり、それを断るなどというもったいないことはできないのだ。だがしかし、ここはやはり断るべきであったと後悔している。なぜかというと、理由は単純明快で、筆者には美少女フィギュアなんか作れなかったからである。まず直線が作れない。自然界における直線は水平線か地平線くらいのもので恐竜にせよ何にせよ生物の構成要素に直線などというものはない。牙やらツノやらがほぼ直線でもそれが多少歪んで表現されても誰も気にしないし、どころか味であったり逆にそこがリアルなどと好意的に解釈されるものだが、人造物はそうはいかない。建物にしろ衣類にしろ風景にしろ直線直線直線のオンパレード。ああ、何でまた人類ヒト種はこれほどまでに直線が好きなのか。これはこれで種として抱える病理であろうと思えるし、誰か文化人類学者の偉い人が分析してくれていそうな気もするが寡聞にして筆者は知らない。依頼の美少女フィギュアはファイナルファンタジーあたりのゲームキャラクターで剣と盾をかまえているのだが、剣は当然ほぼ直線であり、盾の装飾も普通に直線が交差していたりする。ところが筆者のような不器用者がこれを粘土で作ろうとすると歪む歪むゆがむ。こんなグニャグニャの剣ではコンニャクも切れまい。そしてさらに筆者には柔らかい曲線も作れない。美少女フィギュアの命とも言うべきつるんとした人肌がうまく表現できないのだ。布に水をつけて擦れば石粉粘土はつるつるのつやつやになる。それくらいは知っているし、実際に恐竜のツノやツメ、サイズによってはキバだってそのようにして表現している。ところがヒトの顔や身体は微妙な曲線で構成されており鼻やら口やら微妙な突起や陥没があって複雑怪奇である。それが奇跡のような組み合わせであの可愛らしくも美しい造型になっているわけで、当たり前の話だが、ただつやつやにしればいいというものではないのだ。直線も曲線も作れず、結局筆者には美少女フィギュアは作れないのであった。己の技術と才能の限界を思い知らされるいい機会ではあった。かくして依頼主様に詫びを入れ、送料だけご負担いただいて進呈することとなった。何とかなるのではないかなどと自惚れ、軽々しくも安請け合いしてしまったことを深く反省しよう。



◇完成作品一覧
●名場面(ジオラマベース付)シリーズ
●ディフォルメシリーズ
●ジオラマベース
●2メートルのティラノサウルスを作ったぞ!



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