①制作に至る経緯
②まずは骨組みから

〇依頼主様へ 取り扱い上の注意というか破損の補修方法について

 

まずは遠路はるばる引き取りに来ていただいて、ありがとうございました。そして本当にご苦労様でした。こちらとしましても、ご依頼の2メートルティラノサウルスをやっとお渡しすることができてうれしい限りです。お子様たちにも気に入っていただければこれに勝る喜びはありません。本来ならばお食事でもご一緒して長距離ドライブの労をねぎらいたくもあり、同じく恐竜を愛する者(ですよね?)として、ティラノサウルスの魅力について語り合ったりなんかして親睦を深めたかったところではありますが、ご存知のように現在東京は緊急事態宣言下でもあり、それはかなわず、そこは少々心残りではあります。

さて、2メートルティラノサウルスについて、取り扱い上の注意というか破損の補修方法についてお伝えしたいと思います。

本体表面造型に使用した軽量樹脂粘土は素晴らしく軽量で、同時に硬度も強度もありません。硬度がないというのは欠点ではなく、ぶつかったときなどに緩衝効果が期待できてケガに繋がりにくい利点があります。お子さんのいる環境では重要なことだと思われます。また硬度の低さによる緩衝効果は本体の破損しにくさにも繋がるはずです。さらに本体には爪の先から歯の一本一本まで全身くまなく角材もしくはアルミ線が仕込んでありますから、ぽっきり折れてしまうというような大きい破損はまずあり得ません。

ただし、表面の強度のなさについては、これは欠点と言えるかもしれない。緩衝効果で大きく破損はしにくいのですが、表面が剥離する、つまり、はげたり、はがれたり、といった小さな破損は多々あり得ると思われます。例えば公園の恐竜像などは石像だったり、コンクリートだったり、FRP樹脂(繊維強化プラスチック)だったりするのですが、それらとは違って、軽量樹脂粘土の表面強度は明らかに劣ります。リビングに置くとのことでしたから問題ありませんが庭や玄関先などで雨ざらしにはできませんのでご注意ください。あくまでも遊具ではなく繊細で脆い工芸品だと思っていただければよろしいかと思います。

作業中にも一度、脇に積んであった段ボールの空箱が崩れてぶつかったことがあるのですが、ぶつかった箇所が小さく剥離しました。空の段ボール箱の衝撃程度ではげるわけですから、日常生活の中で、お子さんがぶつかったり、爪で引っかいたり、カバンをぶつけたり、家具とこすれたり、といったことでも表面に小さな剝離破損が起こることが予想されます。その前段階として、輸送中にもその程度の衝撃はあるかもしれず、ご自宅に到着するまでに破損することがないとは言い切れず、実はそれも心配しています。でも慌てないでください。補修は難しくありません。その方法を説明しようというわけです。

まず、小さな剥離の場合は、剝離箇所を接着剤で貼り付けてください。瞬間接着剤が便利でしょう。はがれた箇所に接着剤を塗って、元通りの状態にしてください。ほんの小さな剥離であればそれだけで補修完了です。しかし、きっちり元通りに貼れず、貼り合わせの部分に粘土の地色が白い筋のように残ることもあるでしょう。その場合は上から塗装してください。塗装には文具店や百円ショップでも買えるアクリル絵の具がいいでしょう。

皮膚の色よりも暗めの色を作ります。まあ黒を混ぜた茶色ですよね。これを補修箇所に塗って白い筋を隠します。きっちりその箇所だけをピンポイントで塗ろうとせずに、周辺もまとめて雑に塗ってしまいましょう。乾いたら、明るめの色、黄色と茶色と白を混ぜた薄茶色もしくは黄土色でドライブラシです。ドライブラシとは? で検索しても簡単に解説が出てきますが、まあ少量の絵の具をつけた筆先を紙などにこすりつけてさらに絵の具を落とし、ほとんど絵の具のついていない状態の筆先をこすりつけて塗る、という、「かすれ塗り」とでも言えばいいでしょうか。やってみれば実に簡単です。凹凸の凸に部分にだけ色が乗ります。これで補修箇所は他と馴染んで目立たなくなるはずです。多少目立ったとしても恐竜の場合、色むらは瑕疵ではなくむしろ味わいです。

形状が崩れるくらいの大きな剥離、もしくは、芯部まで届く大きなひび割れ破損の場合は、接着剤に加えて粘土も使いましょう。前述の通り、破損しても欠落することはない(割れても落ちずに繋がった状態を保つ)と思います。こぼれの少ないひび割れならその箇所に接着剤を流し込むだけで事足りるわけですが、破片がこぼれ落ちてしまって、ひび割れを合わせても隙間ができてしまうようなら、隙間を少量の粘土で埋めてやるのです。この場合は瞬間接着剤よりも木工用ボンドの方が扱いやすいでしょう。接着したい面に木工用ボンドを塗り、粘土を盛って接合させます。あるいは、割れ目に木工用ボンドを流し込み、そこに粘土をねじ込みます。粘土は本体の造型に使ったものと同じ軽量樹脂粘土を使いましょう。「かるがる」という商品名でアマゾンでも買えますが、ご近所の文具店やホームセンターで取り扱いがあるようならそちらの方が安いかもしれません(アマゾンでは227円ですが、ホームセンターでは168円でした)。粘土にボンドを練り込んでやればより接着強度は増すでしょう。難しく考えることはありません。ボンドのついた手指でそのまま粘土を揉んでやればいいだけです。

乾燥を待って塗装してください。先ほど説明したのと同じ要領で、暗めの色で雑に周辺ごと粘土の白い地色を隠し、明るめの色でドライブラシです。思い切りよく雑に不器用にやるのがポイントです。これで補修箇所は他と馴染んで目立たなくなるはずです。しつこいようですが、目立ったとしても恐竜の場合、色むらは瑕疵ではなく味わいですから問題ありません。

補修セットとして、アクリル絵の具各色と筆、木工用ボンド、軽量樹脂粘土を同梱しておきます(使用材料費には計上していない個人的なプレゼントというかオマケみたいなものです)。是非試してみてください。

かつて千利休は茶器の価値を高めるためにわざと割って、破損を補修することで味わいを引き出したといいます。割れや欠けを隠すどころか、あえて漆で固めた金属で強調して目立たせる「金継」と呼ばれる伝統工法ですね。高級茶器と粘土恐竜を一緒に語るのも乱暴ですが、2メートルティラノサウルスもまた、補修を重ねるほどに味わいが増し、愛着も沸くのではないでしょうか。家族の一員として(というのは大袈裟ですが)末永くリビングに飾っていただけることを願っています。

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◇恐竜名鑑
①ティラノサウルス

◇完成作品一覧
名場面(ジオラマベース付)シリーズ
ディフォルメシリーズ
ジオラマベース
2メートルのティラノサウルスを作ったぞ!